マルコ水産のこだわり
海苔のタネを育てる期間を「育苗(いくびょう)」といいます。
種付けが済んだ網はいったん冷凍保存し、海水温が23℃以下になったら育苗を開始します。
20枚ずつ束ねた網を養殖域に設置し、約20日間、毎日網を洗浄して干します。
育苗の成否で、出来上がる海苔の良し悪しが決まる大事な工程のため、マルコ水産最大のこだわりポイントです。


マルコ水産の海苔ができるまで
マルコ水産では、海苔の胞子(たね)から養殖をスタートします。
10月初旬にたね付けを行い、様々な過程を経て収穫できる状態になるのが12月中旬~下旬ごろです。
このうち、その網からシーズンの一番初めに収穫する海苔のことを、「初摘み」や「一番摘み」といい、
柔らかくて風味が豊かなことが特徴です。
その後、二番摘み、三番摘みとすすみ、海の栄養塩が減ってきて、海苔が色落ちする2月下旬~3月上旬ごろにシーズンが終了します。
収穫した海苔を、工場で板海苔にするまでが海苔師の仕事ですが、ここでは収穫までの過程をお伝えします。
これが海苔のタネです。海苔は夏の間、糸状体(しじょうたい)という状態になって、牡蠣殻の中で過ごします。これを牡蠣殻糸状体と言います。
写真右側の黒い牡蠣殻は糸状体が成熟して胞子がたくさん入っている牡蠣殻。種付けが終わって胞子が出尽くすと、左側のように牡蠣殻は白くなります。
条件を整え、水車を回して
胞子を付けます




水車の下の水槽に牡蠣殻を設置し、水車を回すことで胞子が放出されやすい条件を整えます。
この時期、海水温はまだ25℃以上ありますが、水車を回して蒸発する気化熱を利用して水温を23℃以下まで下げます。


しっかりとタネがついているのが確認出来たら、網を取り込んで養生槽で寝かした後、海水温が23℃を下回るまでいったん冷凍します。
海水温が23℃以下になったら育苗を開始します。20枚ずつ束ねた網を養殖域に設置し、約20日間、毎日網を洗浄して干します。

網には、海苔以外の「雑草」が付きます。放っておくと雑草の方が早く網を占領し、海苔が死んでしまいます。それを防ぐために、乾燥に強いという海苔の性質を利用して、毎日洗浄して干すことで、「雑草」が増えるのを防ぎながら海苔の苗を育てるのが「育苗」です。目に見えなかったタネが、0.5~1㎝位になるまで、およそ17-20日間くらいかけて育てます。



良し悪しの大方が決まります。
失敗するとシーズン終了までずっと尾を引きます。
ここは妥協できません。
育苗期間中は、毎朝6時に出港し、人の力で網を引き上げ、
高圧の海水ポンプで洗浄し、干した後、再び海に戻します。
海苔は乾燥に強いとはいえ、干しすぎると傷んで、弱い芽は死んでしまいます。気温、湿度、天候によって、干出加減をコントロールする必要があります。これはもう、経験しかありません。マルコ水産では、干出中は網から片時も離れず、手肌の感覚で海に戻す時間を判断します。
干出終了後には毎日網を切り取って持ち帰り、顕微鏡で芽の状態を確認し、翌日の干出をどうするかの判断をしています。

これは、育苗6日目の芽の顕微鏡画像です。
この日、細胞が縦方向に分裂する「縦割れ」を初めて起こします。
この日は、海苔が一生で一番弱い日。細心の注意が必要な、判断が難しい日です。



育苗開始時は真っ白で何も見えなかった網が、育苗が終了するおよそ20日後には黒々とした海苔がはっきりと見えるようになります。
育苗が済んだ網は、海水温が18℃前後になるまで再び冷凍します。
海水温が18℃を切ったら、20枚1組で育苗し、
冷凍していた網を、
1枚ずつにばらして養殖域に張り込みます。
ひたすら網をくくり付ける作業を、9-10日くらいかけて行います。
地味な単純作業ですが、かなりの重労働です。


たねから育ててきた苦労が報われる瞬間です。
もぐり船という専用の船で網の下をくぐって、船の上部にある回転式のカッターで刈り取ります。


